2025年10月30日
非回復性顔面神経麻痺および後遺症に対する鍼灸治療の効果
非回復性顔面神経麻痺と後遺症に対する鍼灸治療の効果
【はじめに】鍼治療は顔面神経麻痺診療ガイドラインで「弱く推奨」されています!
『顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版』では、ベル麻痺(Bell麻痺)・ハント症候群(Hunt症候群)・外傷による末梢性顔面神経麻痺について、急性期・慢性期のどちらの場合にも、鍼治療を行うことが「弱く推奨されている」と示されています。
顔面神経麻痺診療ガイドラインでは、治療に対する推奨度を次の4段階で示しています。
- 強く推奨する(行う)
- 弱く推奨する(行う)
- 弱く推奨しない(行わない)
- 強く推奨しない(行わない)
鍼治療はこの中の「弱く推奨する」に位置づけられており、「明確な効果の根拠はまだ十分ではないものの、臨床的に一定の効果が期待でき、安全性にも大きな問題はない」とされています。
また、この推奨については専門家全員の意見が一致しており(合意率100%)、多くの医療専門家が鍼治療の有用性を認めています。
【目的】1年以上経っても鍼灸治療は顔面麻痺と後遺症を改善する(有効性)を検討しました。
発症から1年以上が経過し、回復がみられない顔面神経麻痺および後遺症を有する12名を対象としました。
初回施術時の評価スコアと、一定期間の施術を行った後(最終施術日)のスコアを比較し、鍼灸治療の有効性を検討しました。
【倫理審査】
本研究は、森ノ宮医療大学倫理委員会の承認を得て実施しています。
補足:「倫理審査」とは、人を対象とする研究や実験が、人の権利や安全を守って行われているかを、事前に専門家が確認・審査する仕組みのことです。
【対象】発症後1年以上が経過した顔面麻痺と後遺症に悩む12名を対象としました。
対象期間:2018年7月~2024年4月
対象者:以下の条件全てにあてはまる12名としました。
- 麻痺発症から1年以上経過した者
- 非回復性の麻痺と後遺症を有する者
- 鍼灸治療を10回以上受けた者
平均年齢:51±14歳、男性4名、女性8名
発症から鍼灸治療までの平均日数:861±858日
平均治療回数:34±11回
【対象者の背景因子】
Hunt症候群4例、Bell麻痺3例、ギランバレー症候群1例、真珠腫手術後1例、脳出血後 1例、耳下腺手術後1例、外傷1例でした。病院での治療歴は、ステロイド治療が9例、減荷術1例、治療なしが3例でした。
【調査・評価方法】
- FaCE Scale:麻痺による日常生活の悩みの程度
15項目を1~5の5段階で評価をしてもらいました。
*数値が大きい程、日常生活の悩みが低い状態を示します。
- 顔面拘縮・顔面痙攣・病的共同運動・ワニの涙:後遺症である4項目の悩みの程度
0~10の11段階で評価をしてもらいました。
*数値が大きい程、後遺症の悩みの程度が高い状態を示します。
- Sunny brook法(FGS):残存麻痺・病的共同運動などの後遺症の点数
安静時対称性・随意運動時の対称性・病的共同運動の3つの要素から構成されており、それぞれの程度について第三者が評価します。
安静時は減点、随意運動は加点、病的共同運動は減点で100点満点で評価します。
*数値が大きい程、良い状態を示します。
- 柳原法:顔面筋の麻痺の程度
安静時の対称性(1項目)と随意運動(9項目)の計10項目を0・2・4の3段階で第三者が評価しました。
*数値が大きい程、麻痺の程度が低い状態を示します。
- 満足度:麻痺症状に対する鍼灸治療に対する満足度
10点法を用い、今回は5点以上を満足としました。
*数値が大きい程、満足度が高い状態を示します。
【調査項目のまとめ】5つの評価方法で鍼灸治療の効果を検討しました!
- FaCE Scale:麻痺による日常生活の悩みの程度
- 後遺症について:顔面拘縮・顔面痙攣・病的共同運動・ワニの涙の4項目
- Sunny brook法:安静時対称性・随意運動時の対称性・病的共同運動の程度
- 柳原法:顔面筋の麻痺の程度
- 満足度:麻痺症状に対する鍼灸治療の効果
【分析方法】
解析ソフトはSPSS(ver.1.5 forWindows,IBM Inc.)を用いました。
評価の比較には、Wilcoxon符号付順位和検定を用い、有意水準は5%未満としました。
【治療方法】
全身の調整:それぞれの体質に合った治療を行います。
局所の治療:顔面部の悩みに応じて治療を行います。
リハビリテーションとして、ミラーバイオフィードバック法などを用いました。
※鍼灸師は、「認定顔面神経麻痺リハビリテーション指導士(日本顔面神経学会)」の資格を取得しており、エビデンスに基づいたリハビリテーションを行っています。
詳しくは、https://jsfnr.org/consulting_doctor_instructor/list.htmlをご覧下さい。
【結果】
- FaCE Scale6分野・合計の比較:QOLの改善効果がみられました!
顔面の運動・食事摂取・顔面の感覚・社会活動・総合点で有意差がみられ、中央値に
改善がみられました。涙液分泌・目の感覚については、有意差・中央値の改善はみら
れませんでしたが、データのばらつきが少なくなり、日常生活における苦痛を軽減で
きることが示唆されました。
- 後遺症の比較:後遺症による不快感や精神的負担が軽減されました!
顔面拘縮・顔面痙攣・病的共同運動で有意差がみられ、中央値に改善がみられました。ワニの涙では、有意差はみられませんでしたが、中央値に改善がみられました。お顔の不快感や、精神的な負担の軽減が示唆されました。
- Sunny brook法の比較:いろんな表情が自然に作れるようになりました!
安静時対称性・病的共同運動・随意運動・複合点全ての項目で有意差がみられ、
中央値に改善がみられました。表情の自然さや、日常生活の苦痛が軽減されること
が示唆されました。
- 柳原法の比較:お顔の左右差と動きにくさの軽減がみられました!
初回合計の中央値は20点で、最終合計の中央値は26点でした。有意な改善がみられ
ました。お顔の左右差や動きにくさの軽減につながることが示唆されました。
- 鍼灸治療の満足度:満足度が上がり、QOLが向上しました!
対象者全員が満足を示す5点以上で、100%満足となりました。
非常に高い満足度になりました。
【考察】鍼灸治療により、日常生活の苦痛などが軽減できることが示唆されました!
非回復性麻痺と後遺症が鍼灸治療で改善することが示唆されました。
顔面神経麻痺診療ガイドラインに記載されている、鍼治療推奨内容が一鍼灸院で確認できたと考えます。
発症後1年以上経過した非回復性麻痺や後遺症は完全治癒のレベルには達しないが、日常生活における苦痛を軽減できることが示唆されました。
【結語】鍼灸治療が顔面神経麻痺とその後遺症を改善する選択肢の一つになることが示唆されました!
鍼灸治療は発症1年以上経過し、非回復性麻痺や後遺症によるQOL低下に苦しむ患者の治療選択肢の一つになる可能性が示唆されました。






















