
2025年08月21日
完全顔面神経麻痺は、後遺症が高率で出現し、完治が難しいとされています。
しかし、中村らが「発症後1年以内の末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果」で対象者の50%が完治したと報告しています。
そこで今回、初診時発症後3ヵ月以内に来院した12名に絞り、麻痺に対する鍼灸治療について調査を行い、比較検討しました。
※完治の基準(引用:顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版)
各調査項目別対象者は、調査可能であった者としました。
今回は、上記の5項目を用い、比較検討を行いました。
調査内容については、「調査内容」に記載します。
顔面筋がどれくらい動くか安静時の左右対称性と随意運動(9項目)の計10項目を4点(ほぼ正常)・2点(部分麻痺)・0点(高度麻痺)の3段階で評価を行います。
施術者以外の第三者が評価を行い、点数が高いほど麻痺の程度が低い状態を表します。
今回は、初回と最終合計の中央値比較と最終38点以上の人数・割合を調査しました。
心理面を含めた15項目を1項目5段階で評価を行います。
各項目は、顔面運動・顔面感覚・目の感覚・涙液分泌・食事摂取・社会行動の6分野に分けられます。
患者本人が評価を行い、点数が高いほどQOLが向上した状態を表します。
今回は、初回と最終合計の中央値比較と、6分野別中央値比較を行った。
後遺症(3項目)を簡単に説明します。
NRS(0~10の11段階)を用いて評価を行いました。
患者本人が評価を行い、点数が低いほど後遺症の程度が低い状態を表します。
今回は、発症後6ヵ月以降で最も後遺症がみられた調査日と最終合計の中央値比較を行った。
※Sunny brook法は、安静時対称性と随意運動時の対称性と病的共同運動(表情筋を動かしたときに、意図せず別の筋肉も動いてしまう状態)の3項目を同時に評価することで、どこの領域に問題があるのかを理解する事ができます。
安静時非対称-随意運動の対称性-病的共同運動でスコアを算出します。
撮影した写真や動画をみて評価を行いました。
第三者が評価を行い、点数が高いほど後遺症の程度が低い状態を表します。
今回は、対象者の最終複合スコアを調査しました。
※調査表についてはスライドの通りです。
1~10の10段階で評価を行いました。
10点中7点以上を満足としました。
患者本人が評価を行い、点数が高いほど満足度が高い状態を表します。
今回は、対象者の最終満足度を調査しました。
全身の調整として、各々の弁証にあった治療をしたのち、局所(顔面部)の治療として、悩みに応じた治療を行いました。
リハビリテーションとして、ミラーバイオフィードバック法などを用いました。
※当院の院長は「認定顔面神経麻痺リハビリテーション指導士(日本顔面神経学会)」の資格を取得しており、エビデンスに基づいたリハビリテーションを行っています。
詳しくは、日本顔面神経学会 認定顔面神経麻痺リハビリテーション指導士一覧をご覧下さい。
解析ソフトは、SPSS(ver.1.5 forWindows,IBM Inc.)を用いました。
柳原法、FaCE Scale、ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣については、Wilcoxon符号付順位和検定を用いました。
有意水準は5%未満としました。
柳原法(顔面表情のそれぞれの部位の動きの程度をみる評価法)の初回と最終の中央値比較と最終38点以上の人数・割合を調査しました。
※「発症1年以降に評価したもので、柳原法が38点以上であり後遺症が軽度である」という条件から、最終38点以上の人数・割合を調査しました。
中央値比較では、初回12/40点、最終39/40点であり、有意差がみられました。
対象者の7/12名(58.3%)が最終38点以上であり、予想される回復過程を大きく上回る結果となりました。
FaCE Scale(顔面神経麻痺患者のQOLを調査する評価法)の6分野とFaCE Scale合計の初回と最終の中央値比較を行いました。
※6分野には、「顔面運動」「顔面感覚」「眼の感覚」「涙液分泌」「社会活動」「食事摂取」があります。
6分野ごとの評価では、「顔面運動」「眼の感覚」「涙液分泌」「食事摂取」の4分野で有意差がみられました。「顔面感覚」「社会活動」の2分野では、有意差はみられなかったものの改善はみられました。
FaCE Scale合計の中央値比較でも有意差がみられました。
後遺症(ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣)の3項目の程度の初回と最終の中央値比較を行いました。
※ワニの涙:食事中に涙が出てしまう有意差はみられませんでしたが、「顔面拘縮」で改善がみられました。
初回から最終まで後遺症なしの0点を評価する方も多かったです。
後遺症は、出現時期に個人差がありました。発症1年の時点で調査して、再検討したいです。
Sunny brook法(後遺症をみる評価法)の「随意運動スコア」「安静時対称性スコア」「病的運動スコア」それぞれの得点と「複合スコア」を調査しました。
「安静時対称性スコア」と「病的運動スコア」については点数が低い方が左右対称で病的運動が少ないことを示します。「安静時対称性スコア」については、8/9名が0点でした。
麻痺症状に対する鍼灸治療の最終満足度を調査しました。
最終満足度は、対象者全員が7点以上としており、うち10点が57.1%でした。
※10点中7点以上を満足として調査を行いました。
柳原法とFaCE Scaleの結果から、顔面筋の麻痺の軽減やQOLの向上が有意にみられました。
ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣では、有意差はありませんでしたが、最終データのばらつきが少なくなりました。鍼灸治療開始してから途中で後遺症が出現し始めたため、調査のタイミングが難しかったです。今後調査タイミングについて検討していきたいと思います。
Sunny brook法では、対象者全員が80点以上であり、後遺症が軽度でおさまったと考えます。
満足度も高く、鍼灸治療が麻痺症状に対する不安感などの軽減につながったと考えます。
中村らが、「発症1年以内の末梢性顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果」で対象者の50%が完治したと報告していますが、今回、初診時発症3ヶ月以内と中村らより対象期間を短くしました。
結果は、58.3%が完治でした。未完治の5名も、柳原法で有意に改善がみられ、満足度も高かったです。対象者全員が予想される治癒曲線を大きく上回る結果となりました。
発症後の鍼灸来院時期は、より早い方が麻痺の改善や後遺症の軽減に影響することが示唆されました。





















