発症後3か月以内の末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果−2症例−|第74回全日本鍼灸学会学術大会,顔面神経麻痺|学会発表|大阪市天王寺区のまり鍼灸院

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学会発表

2025年07月11日

発症後3か月以内の末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果−2症例−

目的

発症3か月以内の完全麻痺2症例の柳原法点数が鍼灸治療により、経時的回復過程以上に改善がみられた。
完全顔面神経麻痺(以下完全麻痺)は、柳原40点法の経時的回復過程(以下過程)1)では麻痺は 20 点前後の回復で、後遺症が残るとされています。今回は発症3か月以内の完全麻痺2症例の柳原法点数が鍼灸治療により、過程以上に改善がみられたので報告する。また、後遺症とFaCE Scaleも同時に調査した。
1) 経時的回復過程:柳原40点法を用いて予後診断します。臨床的に時間経過に伴う改善過程を示します。完全顔面神経麻痺は不完全回復、明確な後遺症が残るとされてます。

方法1 調査項目・評価時期

今回は、4つの項目を使って調査しました。

  1. 柳原法(40点法):顔面筋の麻痺の程度、初回と最終を比較しました。
  2. FaCE Scale(75点満点) :麻痺QOL特異的尺度、これは経時的変化をみました。
  3. 後遺症の程度(NRS0~10の11段階):ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣。
  4. 満足度(10点法):麻痺に対する鍼灸治療の満足度。 3と4は最終を調査しました。
1. 柳原法(40点法):顔面筋の麻痺の程度

施術者以外の第三者が、治療5回毎に評価します。
安静時の対称性(1項目)、随意運動の運動程度(9項目)の10項目を評価してもらい、その合計を比較しました。

2. FaCE Scale(75点満点):麻痺QOL特異的尺度

患者様本人に月1回自己評価をしてもらいます。
顔面運動、目の感覚、顔面感覚、涙液分泌、食事摂取、社会行動の6つの項目により構成されています。今回は、6分野別に評価比較しました。

3. ワニの涙・拘縮・痙攣(NRS0~10の11段階):後遺症の程度

患者様本人に治療5回毎に評価してもらいます。
ワニの涙(食事中に涙が出る)、拘縮(顔のひきつり感)、痙攣についてNRS(Numerical Rating Scale)0~10の11段階を用いて評価してもらい、各々の項目を比較しました。点数が低いほど後遺症の程度が低い状態を示めします。

4. 満足度(10点満点)

患者様本人に治療5回毎に評価してもらいます。
0が「全く満足でない」、10が「非常に満足である」とし、麻痺に対する鍼灸治療の満足度を10点満点で評価してもらいました。
満足度は、7点以上を満足としました。

完全治癒の基準について

完全治癒の基準

  1. 柳原法(40 点法)で 38 点以上に回復したもの。
  2. 中等度以上の病的共同運動が残存しないもの。
  3. 発症後1年以降に評価されたもの。

上記3条件をすべて満たした場合に、治癒と判断する。

※2023年版 顔面神経麻痺診療ガイドラインを引用しています。

症例1

80歳女性。罹病期間36日。左完全顔面神経麻痺、ステロイド治療で2割程度の回復しか見られなかった。
X年-36日に病院を受診し、ウイルス検査異常なし、柳原法が8点、左完全神経麻痺と診断されました。調査時点鍼灸治療回数35回目でした。
ステロイド点滴治療をしたが、2割程度の回復しかみられませんでした。麻痺発症36日後に当鍼灸院を受診しました。
東洋医学的所見として、初診時は、痩舌・舌尖紅・舌苔少・舌下静脈の少し怒張などがみられました。弁証は、気陰両虚としました。

結果1 症例1の柳原法(40点法)変化。初診時12点から32点に改善した。

初診時から治療35回(最終)までを比較しました。
症例1は、初診時12点から最終32点に改善しました。
不完全回復、明確な後遺症が残るとされている中で、過程を上回った結果となりました。

結果2 症例1のFaCE Scale(75点満点)変化。初診時40点から65点に改善した。

FaCE Scaleを顔面運動・目の運動・顔面感覚・涙液分泌・食事摂取・社会行動の6分野に分け、初診時と最終を比較しました。
それぞれの分野について青を満点・オレンジを初回点数・緑を最終点数に示します。点数が高い方が良好。
症例1、合計点数は初診時40点から65点と改善しました。その中特に、顔面運動5から12点、目の感覚3から9点、食事摂取4から9点は満点に近い改善が見られました。

結果3 症例1後遺症は無し。(ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣を比較した)

NRS(Numerical Rating Scale)0~10の11段階を用いて後遺症の程度の最終を調査しました。
完全顔面神経麻痺では後遺症が高率で出現するとされてますが、すべて0点でありました。

症例2 65歳女性。罹病期間17日。右完全神経麻痺。ステロイド治療であまり改善がみられなかった。

X年-17日に病院を受診し、右完全顔面神経麻痺(ベル麻痺)と診断されました。
ステロイド点滴治療しましたが、あまり改善はみられませんでした。発症17日後に当鍼灸院を受診しました。
東洋医学的所見として、初診時は絳舌・舌辺瘀斑などがみられました。
弁証は、肝腎陰虚としました。

結果1 症例2の柳原法(40点法)変化。初診時10点から38点に改善した。

初診時から治療54回(最終)までを比較しました。
症例2は、初診時10点から最終38点に改善しました。
不完全回復、明確な後遺症が残るとされている中で、過程を上回った結果となりました。

結果2 2症例のFaCE Scale(75点満点)変化。初診時32点から63点に改善した。

FaCE Scaleを顔面運動・目の運動・顔面感覚・涙液分泌・食事摂取・社会行動の6分野に分け、初診時と最終を比較しました。
それぞれの分野について青を満点・オレンジを初回点数・緑を最終点数に示します。点数が高い方が良好。
症例2は、合計点数は初診時32点から63点と改善しました。その中特に、社会行動が15から20点(満点)、顔面運動5から12点、食事摂取2から9点が満点に近い改善が見られました。

結果3 症例2後遺症は軽度であった。(ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣を比較した)。

NRS(Numerical Rating Scale)0~10の11段階を用いて後遺症の程度の最終を調査しました。
ワニの涙3・顔面拘縮1・顔面痙攣0点であり、すべて軽度であった。

症例1、症例2の鍼灸治療に対する満足度】2症例ともに10点満点でした。

考察1 完全神経麻痺と診断され⇒病院であまり改善しなかった⇒鍼灸治療により顔面筋麻痺が改善と後遺症の軽減がみられた。

2症例ともに、病院で完全顔面神経麻痺と診断されたが、鍼灸治療により柳原法の顕著な改善がみられた。ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣無から軽度でした。また、FaCE Scaleにおいても改善がみられました。発症後に鍼灸治療を開始することで、完全麻痺患者の日常生活の苦痛が軽減したと考えます。

結語 顔完全麻痺であっても、発症後3ケ月以内の鍼灸治療を始めると、顕著な麻痺の改善や後遺症の軽減・予防、QOLの向上に有効である可能性が示唆された。

症例1は柳原法32点、後遺症なし。症例2は柳原法38点、後遺症は軽度で完治であった。
完全麻痺であっても、発症後3か月以内の鍼灸治療を始めると、麻痺の改善や後遺症の経験・予防、QOLの向上に有効である可能性が示唆されました。