発症後1年以内の末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果−2症例−|第74回日本東洋医学会学術総会,顔面神経麻痺|学会発表|大阪市天王寺区のまり鍼灸院

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学会発表

2025年04月10日

発症後1年以内の末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果−2症例−

目的

顔面神経麻痺診療2023年ガイドラインで鍼治療が推奨されました。

顔面神経麻痺診療2023年ガイドラインの中で、顔面神経麻痺患者への治療として鍼治療が治療フローチャートに掲載されました。
今回、発症後1年以内の2症例に鍼灸治療により改善がみられたので報告します。

方法1 調査項目

今回は、4つの項目を使って調査しました。

  1. FaCE Scale(75点満点) :麻痺QOL特異的尺度
  2. 柳原法(40点法):顔面筋の麻痺の程度
  3. ワニの涙・拘縮・痙攣(NRS0~10の11段階):後遺症の程度
  4. 満足度(10点法):麻痺に対する鍼灸治療の満足度
1.FaCE Scale(75点満点):麻痺QOL特異的尺度

患者様本人に月1回自己評価をしてもらいます。
顔面運動、目の感覚、顔面感覚、涙液分泌、食事摂取、社会行動の6つの項目により構成されています。今回は、6分野別に評価比較しました。

2.柳原法(40点法):顔面筋の麻痺の程度

施術者以外の第三者が、治療5回毎に評価します。
安静時の対称性(1項目)、随意運動の運動程度(9項目)の10項目を評価してもらい、その合計を比較しました。

3. ワニの涙・拘縮・痙攣(NRS0~10の11段階):後遺症の程度

患者様本人に治療5回毎に評価してもらいます。
ワニの涙(食事中に涙が出る)、拘縮(顔のひきつり感)、痙攣について
NRS(Numerical Rating Scale)0~10の11段階を用いて評価してもらい、各々の項目を比較しました。

4. 満足度(10点満点)

患者様本人に治療5回毎に評価してもらいます。
0が「全く満足でない」、10が「非常に満足である」とし、麻痺に対する鍼灸治療の満足度を10点満点で評価してもらいました。
満足度は、5点以上を満足としました。

完全麻痺の基準について

柳原法(40点満点)を用いた完全麻痺の基準は以下の通りです。

① 12点以上を不完全麻痺、10点以下を完全麻痺
② 20点以上軽症、18~12点中等度、10点以下を重症

※2023年版 顔面神経麻痺診療ガイドラインを引用しています。

【症例1】17歳男性。麻痺発症14日後に当鍼灸院来院。

X年1月11日に耳鼻科を受診し、右完全神経麻痺(ベル麻痺)と診断されました。
8日間のステロイド点滴もあまり改善はみられませんでした。麻痺発症14日後に当鍼灸院を受診しました。
東洋医学的所見として、初診時は足が黒く冷たい、舌下静脈怒張、舌暗紅などがみられました。弁証は、腎気虚としました。

【症例2】21歳男性。麻痺発症2ヶ月後当鍼灸院来院。

X年11月上旬に病院を受診し、左顔面神経麻痺(ベル麻痺)と診断されました。
ステロイドを服薬しましたが、あまり改善はみられませんでした。発症2ヶ月後に当鍼灸院を受診しました。
東洋医学的所見として、初診時は臍部が黒い、舌下静脈怒張、胖大歯痕などがみられました。弁証は、脾腎気虚としました。

【結果1-1】2症例のFaCE Scale(75点満点)変化。2症例ともに顕著な改善がみられました。

初診時から来院1年2ヶ月目(最終)までを比較しました。
症例1は、初診時59点から最終75点(満点)に改善しました。
症例2は、初診時39点から最終65点に改善しました。

【結果1-2】症例1のFaCE Scale 6分類別変化。すべての項目で改善がみられ、最大では75点満点になりました。

FaCE Scaleを顔面運動・目の運動・顔面感覚・涙液分泌・食事摂取・社会行動の6分野に分け、初診時と最大を比較しました。
青軸を満点、オレンジ軸を初診時、緑軸を最終としました。
顔面運動が初診時4点から最終15点(満点)、食事摂取が初診時7点から最終10点(満点)と改善しました。

【結果1-3】症例2のFaCE Scale 6分類別変化。すべての項目で改善がみられ、顔面運動と社会行動で顕著な改善がみられました。初診時39点から最終65点まで改善しました。

FaCE Scaleを顔面運動・目の運動・顔面感覚・涙液分泌・食事摂取・社会行動の6分野に分け、初診時と最終を比較しました。
青軸を満点、オレンジ軸を初診時、緑軸を最終としました。
全体的に改善がみられましたが、特に顔面運動が初診時7点から最終12点、社会行動が初回11点から最終20点(満点)に改善しました。

【結果2】2症例の柳原法(40点法)変化。2症例とも顕著に改善し、症例1は最大40点満点になりました。

初診時から治療60回(最終)までを比較しました。
症例1は、初診時14点から最終40点(満点)に改善しました。
症例2は、初診時12点から最終34点に改善しました。
2症例ともに顕著な改善がみられました。

【結果3-1】症例1のワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣比較。完全顔面神経麻痺と診断され、病院からは後遺症が出やすいと言われていましたが、後遺症は無しでした。

NRS(Numerical Rating Scale)0~10の11段階を用いて後遺症の程度を調査しました。
初診時から治療55回目(最終)までを比較しました。
初診時から最終までワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣はみられませんでした。
完全顔面神経麻痺と診断されていたので、病院では後遺症が出やすいと言われていましたが、出現しませんでした。

【結果3-2】症例2のワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣比較。完全顔面神経麻痺で後遺症はかなり出現すると言われていましたが、後遺症を軽度に抑制できました。

NRS(Numerical Rating Scale)0~10の11段階を用いて後遺症の程度を調査しました。
初診時から治療60回目(最終)までを比較しました。
初診時(発症2ヶ月後)で顔面痙攣がみられ、治療10回目(発症3ヶ月後)でワニの涙が強くみられたが、治療を重ねるごとに改善していき、最大では軽度になった。

【結果4】満足度(10点法)。2症例ともに高い満足度でした。

初診時から治療45回(最終)までを比較しました。
2症例ともに8点以上で、満足度が高かった。
症例1の治療40回目で、治療頻度が落ちてしまったため、満足度が下がったのではないかと考える。

【考察1】2症例とも病院で完全神経麻痺と診断されたが、鍼治療によって経時的回復過程(顔面筋の機能が回復するまでの時期)より柳原法の改善と後遺症の軽減がみられた。

2症例ともに、病院で完全顔面神経麻痺と診断されたが、鍼灸治療により柳原法の顕著な改善がみられた。ワニの涙・顔面拘縮・顔面痙攣も軽度であった。症例1は、完治(最終柳原法40点、後遺症無し)。症例2は、柳原法34点であるが、後遺症は軽度であった。鍼灸治療が発症後1年以内の末梢性顔面神経麻痺や後遺症治療の選択肢の1つになる可能性が示唆された。

【考察2】顔面神経麻痺発症後、鍼灸治療開始時期が少しでも早いほうが麻痺の改善や後遺症の軽減に影響することが示唆された。

2症例ともに改善しているが、最終合計の点数に差がみられた。2症例の結果の違いは、発症後鍼灸来院時期の差が原因と考える。鍼灸治療時期は発症後早い方が望ましいと考える。