月経前症状(PMS、PMDD)に対する鍼灸治療の効果―MDQを用いて―|2026全日本鍼灸学会,月経前症状(PMS),月経随伴症状(MDQ)|学会発表|大阪市天王寺区のまり鍼灸院

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学会発表

2026年09月24日

月経前症状(PMS、PMDD)に対する鍼灸治療の効果―MDQを用いて―

PMS・PMDDで学業・仕事・日常生活のパフォーマンスが鍼灸で改善するか?

月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)を含む月経前症状は、月経を有する女性にみられる症状であり、身体症状および精神症状によって日常生活機能が障害されるとされています。

  • 学業や仕事のパフォーマンス:記憶力・集中力の低下、強い眠気、無気力感etc…
  • 対人関係:イライラ、攻撃的になる、人との関わりを自ら避けてしまうetc…
  • 家庭生活:家事・育児の停滞、夫婦喧嘩や子供への叱責etc…
  • 身体症状:肌荒れ、頭痛、むくみ、体重増加、疲労感、めまいetc…

これらに支障をきたすことで、生活の質(Quality of Life:QOL)の低下を招くことが知られています。

鍼灸治療は、PMSやPMDDの症状軽減に効果があるのに報告が少ない…。

月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)を含む月経前症状に対する鍼灸治療の効果について報告したものは少ないとされています。
そこで当院では、MDQ問診票(月経随伴症状問診票)を用いて、月経4周期(4ヵ月間)の月経前症状の変化を振り返って調査しました。その結果、鍼灸治療が月経前の症状(PMSやPMDD)の改善に有効であることが分かりましたので、報告します。

当院での調査概要

対象となった方:42名(平均年齢33.3歳)
  • 期間中(2018年11月~2025年5月)に当院を初めて受診された方
  • 初診時月経前のMDQ合計が10点以上(基準以上の不調)あった方
  • 鍼灸治療を続けながら4回分の月経周期のデータを得られた方

※今回は、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)といった厳密な医師の診断による分類は行わず、月経前の症状を有する方を対象として調査しました。

日本人のつらさに合わせて調査

調査にあたっては、MDQをベースに、日本人の体質や感覚に合わない項目(「気分の高揚」や「食べ物の好みが変わる」)を除いた、7尺度41項目を用いました。

分析した7尺度
  1. 痛み(頭痛・下腹部痛・疲れやすい)
  2. 集中力(物忘れ・集中力の低下)
  3. 行動の変化(勉強や仕事への根気がなくなる・居眠り)
  4. 自律神経失調(めまい・冷や汗)
  5. 水分貯留(体重増加・肌荒れ・むくみ)
  6. 否定的感情(泣きたくなる・怒りっぽい)
  7. コントロール(息苦しい・動悸がする)

それぞれの症状を「なし」から「強い」までの4段階で回答いただき、0~3点に点数化して、4ヵ月間の変化を詳しく分析しました。

分析!比較したのは3つのポイント『全体のつらさ』『お悩み別つらさ』『項目別つらさ』

患者様のリアルな変化を見逃さないよう、次の3つの角度から細かくチェックしています。
初診時直近月経周期を初回とし、初診後1~4周期のスコアを中央値で調査しました。

  1. 月経前の全体のつらさ「41項目合計点」
    41項目の不調すべての点数を合計した。身体と心の「全体のつらさ」がどれくらい軽減したのかを調べました。
  2. タイプ別の「お悩みグループ合計点」
    41項目の不調を「痛み」「集中力」「行動の変化」など、7つのグループに分けて、お悩みグループタイプ別に鍼灸治療の効果がでやすいかを調べました。
  3. 41項目の不調「ひとつひとつの変化」
    「頭痛」「泣きたくなる」「イライラする」など、41項目ある症状それぞれが、どれくらいピンポイントで楽になったかを調べました。

データの信頼性へのこだわり:「正しい結果」をお届けするために

今回の調査結果は、なんとなく「良くなった気がする」という雰囲気だけのものではありません。大学病院や研究機関でも広く用いられているデータ分析ソフト(SPSS)を用い、専門的な統計テスト(Friedman検定やWilcoxson符号付順位和検定)を行いました。
専門的には「有意水準5パーセント未満」と言う基準をクリアした者だけを「効果あり」として認めています。有意水準5%未満は、「たまたま良くなったのではなく、95%以上の確立で『鍼灸治療の効果で良くなった』といえる」という信頼できる確かなデータです。

どんな治療をどれくらい続けたの?

体質を根本から変えていくために、患者様には「1~2週間に1回」のペースをおすすめし、通っていただきました。月経4周期(約4ヵ月)を終えるまでの平均的な治療回数は、16.5回でした。

個人の体質に合ったツボと、PMSとPMDDに効くツボを用いり

治療では、東洋医学の視点(中医弁証論治)を取り入れ、「その日の個人の体質や体調に合わせた治療」に加え、関元・次髎・腎兪の3つのツボを用いました。これらは、「子宮や卵巣の血流を良くすること」を目的として選びました。
鍼は、ユニコディスポ単回使用毫鍼の40ミリ16号または40ミリ18号を用い、置鍼時間は8分間としました。

【結果発表1】なんと、つらい症状41項目合計点が半分以下に軽減!

月経前の全体のつらさをみる「41項目の合計点」の比較では、治療を始めて最初の月経からすべての周期で症状が軽くなっていることが分かりました。
中央値で比較した結果は、

治療を始める前(初診時):「25」
↓鍼灸治療を4ヵ月続けると・・・
4回目の月経(月経4周期目):「11」
半分以下に改善しました。

【結果発表2】効果が早くから出て月経から楽になる「痛みと否定的感情」

お悩みのグループによって「楽になり始めるタイミング(時期)」が違うことも分かりました。

治療開始後、早い段階から改善!
  • 「痛み」(頭痛・下腹部痛・腰痛など)
  • 「否定的感情」(泣きたくなる・怒りっぽい)

→治療を始めてから4周期にかけて、すべての周期で有意な改善がみられました。

治療開始後、2周期から!治療を続けることで改善
  • 「集中力」(物忘れ・集中力の低下)
  • 「行動の変化」(勉強や仕事への根気がなくなる・居眠り)
  • 「水分貯留」(体重増加・肌荒れ・むくみ)

→2周期以降すべての周期で有意な改善が認められました。

自律神経に関する症状にも変化!
  • 【自律神経失調】(めまい・冷や汗)

→2周期目と4周期目で有意な改善が認められました。

なお、もともとの訴えが少ないため症状の変化が小さく、有意差が見えにくい側面も考えられました。

【結果発表3】つらい症状41項目中20項目(半分の項目)で“統計学的な改善”が認められました!

月経前の41項目について解析した結果、20項目で統計学的にも有意な改善が認められました。

【特に注目すべき変化】「否定的感情」8項目中6項目で改善しました

特に目立ったのは、身体症状より“精神症状”でした。

以下の項目では、すべての周期で有意な改善が認められました。

  • 泣きたくなる
  • 寂しくなる
  • 不安になる
  • 怒りっぽい
  • 気分が動揺する
  • 憂鬱になる

残りの項目でもいずれかの周期に改善が認められました。

  • 肩・頚凝り
  • 頭痛
  • 腰痛
  • 疲れやすい
  • 考えがまとまらない
  • 集中力の低下
  • 気が散る
  • 居眠り
  • 人付き合い避ける
  • 能率低下
  • めまい
  • 肌荒れ
  • むくみ
  • 気分の動揺
  • 手足のしびれ

残りの21項目では…?中央値改善:2項目 変化なし:18項目
有意差が認められなかった項目でも、治療開始前と月経4周期目の結果は悪化している項目はありませんでした。

鍼灸治療でPMS、PMDDなどの月経前症状が軽減され、生活の質の向上に繋がる!

鍼灸治療によって、月経前症候群=PMS(月経前10~3日前までに起こる身体的・精神的な不調)および月経前不快気分障害=PMDD(PMSと同様で、特に精神的不調がつよくみられる状態)の月経前の症状が軽減し、日常生活の質(QOL)が向上する可能性が示唆されました。

本研究の限界について

本研究は、後ろ向き研究(過去の診療記録をもとに調べた研究)であり、以下の点に限界がありました。

  • 対象群(比較対象となる群)を設定していない
  • PMSとPMDDを区別した解析ができていない
今後の課題

今後は、前向き研究(治療前から計画的に症状の変化を追う研究)や、対象群を設定した検討など、臨床現場で実践可能な比較研究を行うことで、鍼灸治療の有効性をより明らかにできると考えます。

まとめ:鍼灸治療によって、学業・仕事・日常生活のパフォーマンスが向上しました!

鍼灸治療は、PMSおよびPMDDを含む月経前症状に対する補完的治療手段となり得る可能性が示唆されました。