
2026年09月24日
月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)を含む月経前症状は、月経を有する女性にみられる症状であり、身体症状および精神症状によって日常生活機能が障害されるとされています。
これらに支障をきたすことで、生活の質(Quality of Life:QOL)の低下を招くことが知られています。
月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)を含む月経前症状に対する鍼灸治療の効果について報告したものは少ないとされています。
そこで当院では、MDQ問診票(月経随伴症状問診票)を用いて、月経4周期(4ヵ月間)の月経前症状の変化を振り返って調査しました。その結果、鍼灸治療が月経前の症状(PMSやPMDD)の改善に有効であることが分かりましたので、報告します。
※今回は、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)といった厳密な医師の診断による分類は行わず、月経前の症状を有する方を対象として調査しました。
調査にあたっては、MDQをベースに、日本人の体質や感覚に合わない項目(「気分の高揚」や「食べ物の好みが変わる」)を除いた、7尺度41項目を用いました。
それぞれの症状を「なし」から「強い」までの4段階で回答いただき、0~3点に点数化して、4ヵ月間の変化を詳しく分析しました。
患者様のリアルな変化を見逃さないよう、次の3つの角度から細かくチェックしています。
初診時直近月経周期を初回とし、初診後1~4周期のスコアを中央値で調査しました。
今回の調査結果は、なんとなく「良くなった気がする」という雰囲気だけのものではありません。大学病院や研究機関でも広く用いられているデータ分析ソフト(SPSS)を用い、専門的な統計テスト(Friedman検定やWilcoxson符号付順位和検定)を行いました。
専門的には「有意水準5パーセント未満」と言う基準をクリアした者だけを「効果あり」として認めています。有意水準5%未満は、「たまたま良くなったのではなく、95%以上の確立で『鍼灸治療の効果で良くなった』といえる」という信頼できる確かなデータです。
体質を根本から変えていくために、患者様には「1~2週間に1回」のペースをおすすめし、通っていただきました。月経4周期(約4ヵ月)を終えるまでの平均的な治療回数は、16.5回でした。
治療では、東洋医学の視点(中医弁証論治)を取り入れ、「その日の個人の体質や体調に合わせた治療」に加え、関元・次髎・腎兪の3つのツボを用いました。これらは、「子宮や卵巣の血流を良くすること」を目的として選びました。
鍼は、ユニコディスポ単回使用毫鍼の40ミリ16号または40ミリ18号を用い、置鍼時間は8分間としました。
月経前の全体のつらさをみる「41項目の合計点」の比較では、治療を始めて最初の月経からすべての周期で症状が軽くなっていることが分かりました。
中央値で比較した結果は、
治療を始める前(初診時):「25」
↓鍼灸治療を4ヵ月続けると・・・
4回目の月経(月経4周期目):「11」
半分以下に改善しました。
お悩みのグループによって「楽になり始めるタイミング(時期)」が違うことも分かりました。
→治療を始めてから4周期にかけて、すべての周期で有意な改善がみられました。
→2周期以降すべての周期で有意な改善が認められました。
→2周期目と4周期目で有意な改善が認められました。
なお、もともとの訴えが少ないため症状の変化が小さく、有意差が見えにくい側面も考えられました。
月経前の41項目について解析した結果、20項目で統計学的にも有意な改善が認められました。
特に目立ったのは、身体症状より“精神症状”でした。
以下の項目では、すべての周期で有意な改善が認められました。
残りの項目でもいずれかの周期に改善が認められました。
残りの21項目では…?中央値改善:2項目 変化なし:18項目
有意差が認められなかった項目でも、治療開始前と月経4周期目の結果は悪化している項目はありませんでした。
鍼灸治療によって、月経前症候群=PMS(月経前10~3日前までに起こる身体的・精神的な不調)および月経前不快気分障害=PMDD(PMSと同様で、特に精神的不調がつよくみられる状態)の月経前の症状が軽減し、日常生活の質(QOL)が向上する可能性が示唆されました。
本研究は、後ろ向き研究(過去の診療記録をもとに調べた研究)であり、以下の点に限界がありました。
今後は、前向き研究(治療前から計画的に症状の変化を追う研究)や、対象群を設定した検討など、臨床現場で実践可能な比較研究を行うことで、鍼灸治療の有効性をより明らかにできると考えます。
鍼灸治療は、PMSおよびPMDDを含む月経前症状に対する補完的治療手段となり得る可能性が示唆されました。


















