末梢性顔面神経麻痺、完全脱神経型に対する鍼灸治療の効果―1症例報告―|顔面神経麻痺,2019年 日本東洋医学会関西支部例会|学会発表|大阪市天王寺区のまり鍼灸院

menu

学会発表

2020年01月20日

末梢性顔面神経麻痺、完全脱神経型に対する鍼灸治療の効果―1症例報告―

日本東洋医学会関西支部例会にて「末梢性顔面神経麻痺、完全脱神経型に対する鍼灸治療の効果-1症例報告-」について発表させていただきました。

対象者(症例)

[主訴]ハント症候群(右)

調査内容

  1. 回復経過は柳原40点法(以下柳原法)を用い、術者以外の第三者が評価した。
  2. 後遺症を、Sunnybrook評価法を用い、写真にて評価した。
  3. 鍼灸治療満足度を100点法にて、患者本人に評価してもらった。
調査方法1
柳原評価法
柳原法は、顔面の表情10項目の動きに対して評価を行います。0.2.4の3段階評価で採点し、点数が低いほど症状が強いことを示しています。4点はほぼ正常、2点は部分麻痺、0点は高度麻痺に分類されます。
柳原法と経時的回復経過

脱神経型の回復経過はグラフの状態で、発症後8ヶ月の柳原法も30点ほどで、一般的には不完全回復で明確な後遺症が残るといわれています。

調査方法2

Sunnybrook評価法です。
こちらは後遺症の評価に用いました。1.随意運動時の対称性、2.安静時非対称性、3.病的共同運動の3つの要素から構成されており、①のスコアから、②と③のスコアを引き算した複合スコアで評価します。
完全麻痺で随意運動がない状態を0点、正常な状態が100点となります。

治療方法1

全身調整として、気陰両虚による弁証配穴をおこないました。
局所治療として、鍼は、麻痺側顔面部に30ミリ18号の単回使用毫鍼を症状に合わせた8穴に刺鍼しました。
通電は、神経上にある経穴で繋ぎ、約8分間行いました。
灸は、刺鍼穴と重複した3穴に、8分灸を3壮行いました。

顔面部使用経穴

頜厭(GB4)、地倉(ST4)、率谷(GB8)、大迎(ST5)、迎香(LI20)、頬車(ST6)顴髎(SI18)、下関(ST7)太陽(HN5)、糸竹空(TE23)

結果1 柳原法合計の回復経過です。
治療期間約18か月、治療回数は45回、治療頻度は初回から発症5ヶ月頃までは1週に1から2回。
5ヶ月以降は2週に1~2回程度としました。
柳原法は初回6点から、8ヶ月で38点、10ヶ月では40点になりました。
結果2 後遺症、Sunnybrook評価
1. 随意運動スコア100点(完治)2.安静時対称性スコア0点(完治)3.病的運動スコア3点(軽度)で、複合スコア97点となりました
また、柳原法が40点、Sunnybrook評価法が97点で、顔面神経学会の提唱する完治レベルまで達しています。

顔面神経麻痺とは

顔面神経は脳(中枢)からお顔(末梢)を支配している神経で、顔の表情を作る表情筋、音量を調節する耳の筋肉や、涙や唾液の分泌量の調節、舌前の2/3の味覚を主っています。ウィルス感染や、圧迫など、何らかの理由により障害されることで、これらを動かす筋肉が麻痺してしまい、動かなくなる状態をいいます。また、顔面神経麻痺は障害の部位により、中枢性と末梢性の2つに分類されます。

中枢性麻痺顔面神経麻痺は、脳の障害による麻痺をいい、脳血管障害や外傷などにより起こます。
末梢性顔面神経は脳から出た末梢の神経が障害されて起こります。
末梢性にはBell麻痺、Hunt症候群などがあり、今回は末梢性顔面神経麻痺の中でも、さらに難治性といわれる、完全脱神経型、かつ発症1年以上の者について検討しました。(引用:顔面神経の手引き2011年版、当院HP)

柳原40点法(柳原法)とは

柳原法では、「①安静時非対称、②額のしわ寄せ、③軽い閉眼、④強い閉眼、⑤片目つぶり、⑥鼻翼を動かす、⑦頬を膨らます、⑧歯を剥く、⑨口笛、⑩口を曲げる」の10項目で表情筋の動きを診ていきます。

評価は術者以外の第三者が行い、0・2・4の3段階評価で採点し、40点満点中36点以上を治癒と判定しています。柳原法の合計点数が低いほど症状が強いことを示し、顔面の表情の主要な部位に傾斜配点をすることで障害の程度や、病初期、途中経過等の麻痺の程度の評価や予後の予測判断として用います。

(引用:顔面神経の手引き2011年版)

評価方法

柳原40点法を用いて、術者以外の第三者が評価を行いました。36点以上を治癒とし、初診時と最大を40回とした治療最終時を比較しました。

Sunnybrook評価法とは

随意運動時の回復、安静時非対称性、病的共同運動の3つの要素から構成されており、随意運動の回復点数から安静時の非対称性と病的共同運動の点数を引き算した複合点で評価する方法。これらの3項目を同時に評価することにより、どの領域に問題があり、治療目標とするかを安易に理解することができるのが利点で、リハビリテーションの指針に有効である。(引用:顔面神経の手引き2011年版)

末梢性顔面神経完全麻痺の評価基準
顔面神経麻痺発症の経過日数と、初診来院時の柳原法の点数を組み合わせたものになります。
完全神経麻痺の基準(柳原40点法)

  • 発症後3週以上4週未満、40点中8点以下
  • 発症後4週以上5ヵ月未満、40点中10点以下
  • 発症後5ヵ月以上12ヵ月未満、40点中20点以下

(引用:顔面神経麻痺のリハビリテーション)

まとめ

当院では、顔面神経麻痺を発症後数日からから何十年後と、幅広い期間でご来院いただいています。また発症から日にちが経過し、お顔の動きも点数的にもこれ以上良くならないと言われた方も、後遺症でお悩みの方も症状の改善を実感していただいております。

また、末梢性の顔面神経麻痺だけでなく、中枢性の顔面神経麻痺、原因不明など色々な種類の麻痺に対応させていただいています。

顔面神経麻痺を発症して、病院の治療も終え、症状があまり変わらないとお悩みの方!
何年経過しても鍼灸治療を継続して受けることにより、症状は改善されますので、ぜひお近くの鍼灸院へご相談下さい!!