医道の日本 2013年8月号(小児鍼の治療ポイント)|医道の日本|専門誌・学会論文|大阪市天王寺区のまり鍼灸院

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2018年01月12日

医道の日本 2013年8月号(小児鍼の治療ポイント)

小児鍼の治療ポイントと症例

はじめに

小児鍼が「夜泣き」「疳虫」「アレルギー」等によく効くことは周知の事実である。しかし、小児鍼を臨床に取り入れている鍼灸院は少ない。来院された保護者からも小児鍼を取り入れている鍼灸院を探すのに苦労したとよく聞く。その理由として、①治療するポイントがわからない ②その日の治療効果がわかりにくい ③保護者の説得の仕方がわからない、等が挙げられる。

また、小児鍼の効果について、我々は第61回全日本鍼灸学会学術大会(三重大会)にて、小児はり学会認定の『小児鍼問診票』を用いて、4回の治療効果を報告した。小児鍼により、「夜泣き」「疳虫」の症状スコアが有意に改善し、治療満足度も高いといった内容である。

今回は、小児鍼の治療ポイントと診察のポイントを写真を使って説明する。
①治療のポイント:治療内容・治療回数
②診察のポイント:治療前の診察のポイントと小児鍼治療後の変化のポイント。診察と変化の情報を保護者と共有することで、保護者への説得が容易になる。

また、小児鍼のビジュアル効果として、アトピー性皮膚炎の治療効果を2症例紹介する。

治療ポイント

治療内容
鍉鍼

本治法(弁証配穴)として全身調整に用いる。

線香灸

特定の経穴(隠白・少商等)や皮膚の湿っている部分・冷えている部分に用いる。火のついた線香を暖かく感じる距離まで近づける。

線香灸を施術する場所
線香灸を施術する場所
8分灸等

3歳くらいから、治療中じっとしていられる子供に限り灸点紙を用いて施灸する。

大師流小児鍼

大師流小児鍼

皮膚の緊張の調節、アトピーの湿疹部位

吸玉

吸玉施術
吸玉施術

神闕穴に用いる。

アレルギー疾患が主訴の小児には必ず加える治療免疫を正常な状態に近づける効果があると言われている。

治療頻度

2週に1~2回(激しい夜泣きがある場合は、1週に2回治療する事もある)

診察のポイント

小児鍼の治療継続には、その保護者に治療効果を実感してもらうことが必須である。そのため、初診時治療前に、皮膚の色・乾燥・緊張・爪の色等を一緒に確認して、治療後にその変化や効果を確認してもらう。日焼けで黒いと思っていた皮膚が、初回の治療後には血流改善によってピンク色の白い皮膚になったり、蒙古斑が薄くなったり消えたりして、感動の声がよく聞かれる。ここで部位別の診察のポイントを紹介する。

ⅰ)眉間・額の診察

眉間(B)の青筋はもちろん、前額部(A)の皮膚の色もチェックする。頬の部分と比べると、浅黒かったり青かったりする。1回の施術で改善するが、数日で元に戻るということと、徐々に体質を変えていくことを説明する。

ⅱ)腹部の診察
  1. 皮膚の緊張状態を確認する。
  2. 腹診は大腹(a)・小腹(b)・少腹(c)・季肋部(d)に分けて確認し、保護者にも色や緊張状態を伝え、変化を確認してもらう。
  3. 皮膚の色を確認する(浅黒い・青い・黄色い)。

額・眉間額・眉間

腹部腹部

ⅲ)背部の診察
  1. 蒙古斑のある場所と色の濃さを確認する。
  2. 皮膚の緊張状態を確認する。
  3. 皮膚の色を確認する(白・青・浅黒い・黄)。
  4. ABCの場所のどこに所見がみられるか確認し、保護者にも伝え変化を確認してもらう。

背部

A:関連臓腑は心・肺
B:関連臓腑は脾・肝
C:関連臓腑は腎

ⅳ)下肢の診察
  1. 下肢全体の皮膚の色を確認する。
  2. 足指の色と冷えを確認する。
  3. 爪の厚さと色がピンク・白・紫等確認する。
  4. 異常のある経絡を確認し、治療前後の変化を確認してもらう。

足

ⅴ)上肢の診察
  1. 上肢全体の皮膚の色・乾燥・緊張を確認する。
  2. 手指の色と冷えを確認する。
  3. 爪の色がピンク・白・紫か確認する。
  4. 異常のある経絡を確認し、治療前後の変化を確認してもらう。

手

アトピー性皮膚炎治療効果(初回治療前~4回後~9回後)

症例1)5才 女児
症状
全身(顔を含む)に、乾燥性のアトピーがみられ、全身に痒みが強かった。非常に寒がり、風邪をひきやすい。診察時は寒さの為、必ずタオルに包まり震えていた。
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
頚胸部
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
背中
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
腹部
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
コメント
治療を重ねる度に、皮膚炎の面積は減少し、皮膚に潤いと艶が出てきた。痒い部位もかなり限定されてきた。寒がりも治り、タオルなしで治療できるようになった。
風邪もほとんどひかなくなった。
症例2)5才 男児
症状
全身に少し湿った皮膚がみられた。特に手関節・足関節・肘・膝に症状が強く、皮膚が肥厚していた。疳が強く急に泣き出す。
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
左足
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
  • 初診時
    初診時
  • 4回後
    4回後
  • 9回後
    9回後
コメント
全身の皮膚炎は改善した。特に症状の強かった手関節・足関節・肘・膝も皮膚が薄くなり、引き締まった印象を受ける。疳虫も出現しなくなり、落ち着いて治療が受けられるようになった。

まとめ

小児鍼は、1回の治療でその効果を即時に診察のポイントで確認できる。また、4回の治療で症状が大きく改善し、その満足度も高い。これらより、小児鍼は鍼灸の効果を実感しやすいカテゴリーと言える。当院でも、小児の治療から、その患者の両親や祖父母まで長期通院するケースも多い。

つまり、小児鍼は今後の鍼灸市場拡大のキーカテゴリーと言える。今回の治療のポイント・診察のポイントが、読者先生方の日々の臨床に少しでも参考になれば幸いです。

参考・引用文献

  1. 谷岡 賢徳:大師流小児鍼-奥義と実践、六然社、2005
  2. 江川雅人,苗村健治,山村義治ら:薬物療法に抵抗を示した成人型アトピー性皮膚炎3症例に対する鍼灸治療.明治鍼灸医学,第28号:15-27(2001)

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