第48回日本小児東洋医学会学術集会/小児鍼によるカンムシ症状の効果検討―26症例―|第48回日本小児東洋医学会学術集会|学会発表|大阪市天王寺区のまり鍼灸院

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学会発表

2023年10月05日

第48回日本小児東洋医学会学術集会/小児鍼によるカンムシ症状の効果検討―26症例―

目的

第48回日本小児東洋医学会学術集会にて、『カンムシ』症状と『睡眠』症状を併せ持つ小児が小児鍼で改善するか否かを比較検討しました。

対象期間

2018年10月から2021年5月

対象者

上記の期間に当院へ来院した小児77名から、下記の条件に合わせて抽出しました。

  1. Aグループ(以下AG)
    条件:『カンムシ』症状を持つ → 26名(男児16名、女児10名、平均年齢2.8±1.3歳)
  2. Bグループ(以下BG)
    条件:Aグループのうち、『カンムシ』症状と『睡眠』症状を併せ持つ → 18名(男児11名、女児7名、平均年齢1.7±0.7歳)

患者同意

学会等で発表することに同意を得ています。

調査時期

初診時(初診)と5診目治療前(5回)に調査を行いました。

調査票

症状に関する調査票には、日本小児はり学会認定の「小児はり問診票」を使用しました。

調査項目

  1. カンムシ大項目と睡眠大項目の「気になる程度」を0~4の5件法にて評価しました(対象:AG・BG)。
  2. 睡眠小項目である一晩の「途中覚醒」の回数(対象:BG)を調査しました。
  3. カンムシ小項目「キーキー声を出す」「叩く・噛みつく」「イライラ・よく怒る」「物を投げつける」「自傷行為」(対象:AG・BG)
  4. 睡眠小項目「夜泣き」「寝付き」「途中覚醒」(対象:BG)
  5. 小児はり治療に対する保護者の治療満足度は100点法にて評価しました(対象:AG・BG)。
    点数が高いほど満足度が高いものとし、51点以上を「満足」としました。ⅰ)0~25点を「不満」
    ⅱ)26~50点を「やや満足」
    ⅲ)51~75点を「満足」
    ⅳ)76~100点を「非常に満足」

分析方法

・大項目・小項目のいずれの項目も、初診と5回のデータを中央値(四分位範囲)を用いて比較検討しました。

・有意水準は5%未満としました。

小児はり・きゅう治療 *すべて刺さない鍼です。

・「本治法」として個々の体質を調節する治療を行いました。刺さない鍼である鍉鍼を使用し、皮膚にあてて経絡を調節しました。

・「標治法」では大師流小児はり、線香灸、8分灸、電気温灸器を使用しました。
大師流小児はりでは皮膚の緊張のアンバランスを調節し、線香灸・8分灸では経絡・ツボ・皮膚を温めました。
お灸はいずれも熱くない温度を確認しながら、皮膚表面を温めるためだけに使用しました。

・治療頻度は1~2週に1回としました。

結果1 カンムシ・睡眠症状の大項目の中央値は改善し、有意差がみられました!

[大項目「気になる程度」]

  1. カンムシ症状のみの小児(AG)
    → カンムシ症状は、中央値が初診2.0から5回1.0へと改善し、統計的にも有意差がみられました。
  2. カンムシ・睡眠症状を併せ持つ小児(BG)
    → カンムシ症状は、中央値が初診2.5から5回1.0へと改善し、統計的にも有意差がみられました。

結果2・3 カンムシ症状の小項目「症状の程度」の中央値は、AG・BGあわせた全10項目のうち9項目で改善し、有意差がみられました!

対象:カンムシ症状のみの小児(AG) ⇒ 全5項目で中央値が改善し、統計的に有意差がみられました

項目 中央値 有意差
初診 5回
①キーキー声を出す 5.0 3.0
②叩く・噛みつく 4.0 1.0
③イライラ・よく怒る 5.0 3.0
④物を投げつける 6.0 3.0
⑤自傷行為 5.5 3.5

対象:カンムシ・睡眠症状を併せ持つ小児(BG) ⇒ 5項目中4項目で中央値が改善し、統計的に有意差がみられました

⑤自傷行為4.05.5なし2人

項目 中央値 有意差 該当者数
18人中
初診 5回
①キーキー声を出す 4.0 3.0 12人
②叩く・噛みつく 4.0 1.0 12人
③イライラ・よく怒る 5.0 2.0 15人
④物を投げつける 6.0 3.0 11人

結果4 カンムシ・睡眠症状を併せ持つ小児の「途中覚醒」回数の中央値は改善し、有意差がみられました!

対象:カンムシ・睡眠症状を併せ持つ小児(BG) → 途中覚醒の回数は、初診2.0から5回1.0へと中央値が改善し、統計的にも有意差がみられました

結果5 治療満足度はアップしました!

治療満足度100点満点のうち51点以上を「満足」とし、カンムシ症状のみの小児(AG)では95.0%、カンムシ・睡眠症状を併せ持つ小児(BG)では96.0%の保護者が「満足」と評価されました。

考察

  1. カンムシ症状を持つ小児は、4回の鍼灸治療で改善することが示唆されました。
  2. カンムシ症状と睡眠症状を併せ持つ小児も、4回の鍼灸治療で改善することが示唆されました。
  3. 途中覚醒回数においても4回の鍼灸治療で有意に改善することが示唆されました。
  4. 治療満足度も非常に高く、鍼灸治療は有効と考えます。
  5. 自傷行為について、調査対象であるカンムシ症状のみの小児(AG)26名では有意差がみられましたが、カンムシ・睡眠症状を併せ持つ小児(BG)18名では有意差がみられませんでした。これは、BGにおける該当者が2名のみと限られており、統計的には有意差を正確に判別することができなかったからです。ただ、治療9回目には中央値の評価数値が下がり、「症状の程度」が低下していました。

結論

  1. 小児はりにより4回の鍼灸治療で改善することが示唆されました。
  2. 小児はりが患者の治療の選択肢の一つとなる様、今後も小児はりの啓発に力を入れていきたいと考えます。