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専門誌・学会論文

2010年04月04日

医道2010年4月号掲載事例

小児はり問診票の検討
―症状が良くなっても、保護者はずっと心配している―

まり鍼灸院 中村真理 塩田佐知 大段弓子 米山奏

はじめに

我々は第2回日本小児はり学会(2008年9月21日)にて、「小児はり問診票」を提案した。その問診票を実際に臨床時に採用して、小児はりの効果を正しく反映できるか検討した。(2009年10月4日の第3回目日本小児はり学会にて)。その結果、評価項目にある「気になる程度」(保護者が患者の症状を気になるかどうか)と「症状の程度」(見た目の症状の程度)に大きな差がみられた。前者は保護者の心情が投影された評価で、後者は親が判断する見た目や印象の評価である。今回提案する問診票は両者の評価をミックスしたものである。その必要性について述べる。

小児はり問診票の方法と結果
1)方法
対象
X年4月~X+1年6月に当院に来院した小児患者27人(男児12人・女児15人:年齢 3か月~11歳)
問診時期
各治療時に主訴の変化を質問。
問診内容
  1. 情緒不安
  2. アレルギー(アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎など)
  3. 食事(食欲・便秘・下痢など)
  4. その他(近視など)合計24項目
評価項目
  1. 気になる程度(保護者が患者の症状を気になるかどうか)
    保護者が患者の状態について「0.気にならない」「1.少しだけ気になる」「2.気になる」「3.かなり気になる」「4.非常に気になる」の5段階で該当する項目にチェックした。保護者の心情にを映し出した評価と言える。
  2. 症状の程度
    保護者が患者の状態について、NRS(Numerical Rating Scale)で評価。NRSは症状の程度について、最も重い症状を10とし、来院時の状態を0とする。保護者が見たり感じたりした印象に基づく評価と言える。
治療
大師流小児はり、線香灸、8分灸、鍉鍼等を行った。
治療頻度:1~2週間に1回以上
2)結果

図1は「気になる程度」の変化を、実数合計にて初診時と第5診時を比較したグラフである。全体的に293180へと改善が見られた。

図2は図1から情緒不和(夜泣き・カンムシなど)、アレルギー(アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎など)、食事(食欲・排便など)の大項目をピックアップして、初診時と第5診時の「気になる程度」を比較したものである。いずれの項目でも改善は見られる。しかし、実際の症状と比較すると改善度は低く評価されていた。誌面の関係で詳細は省略するが、たとえばアレルギーのアトピー性皮膚炎では、皮膚炎がほとんど消失している症例でも、「4.非常に気になる」にチェックしているケースが多く見受けられた。

小児はり問診票(一部抜粋)
小児はり問診票(一部抜粋)

グラフ

図3は「気になる程度」と「NRS」を同一の項目にて、改善度を比較したものである。全く異なる2つの評価方法を比べるのは無理があるが、改善度に大きく差が見られるのは感じ取れる。患者の症状は、見た目や印象として4回の施術で大きく改善されていたが、保護者は非常に気にしている様子がうかがえる。ほとんど症状が改善していても、数人の保護者から「いつ正常になるのか?」「完治するかどうかを考えると非常に気になる」「問診表にてこの気持ちを先生に伝えたい」との意見をいただいていた。

まとめ

今回、筆者らは自分たちで考案した小児はり問診票を検討した。ここでわかることは、「気になる程度」という保護者の心情を表現した評価の有用性である。小児は当然のことながら、大人と違って自分の考えを施術者に伝えられない。症状が改善されても、それを判断するのは保護者なのである。まだまだ心配している保護者とコミュニケーションをうまく図るには、保護者の心情をくみ取ることが必要となり、それがCS(Customer Satis Saction)の向上につながる。

一方、そういう心情的な要素を極力排し、症状の変化をNRSなどで記してもらうことも大事だと考える。多くの臨床データの集積により、症状別に小児はりの効果を社会にアピールすることが可能である。また、これにより保護者に子供の症状に良い変化が表れていることを、数値にて認識してもらえる。

アトピー患者例
  • 患者:男児7か月
  • 治療:大師流小児はり、線香灸、鍉鍼
  • 施術前
    施術前
    非常に気になる NRS:10
  • 10回
    10回
    非常に気になる NRS:6

小児はりによってアトピーは改善した。実際、保護者によるNRSは10から6に変化している。しかし、感情的には「非常に気になる」としている。この症例では治療後、「IgEの値」も大きく改善されていた。しかし、症状に対する「気になる程度」は、全く変化がないという典型的な例である。こういう保護者にこそコミュニケーションが必要となる。

今回、筆者らは心情に配慮した、新しい問診票を提案した。今後は小児はり問診票の検討をする上で、読者の方々の意見やデータを、日本小児はり学会(神戸市中央区山本通2-14-31兵庫鍼灸専門学校内)までいただければ幸いである。また、この場をお借りして、この問診票を承認していただいた、小児はり学会の恵美公二郎会長はじめ、谷岡賢徳先生および諸先生方に深くお礼を申し上げる。